みさと天文台で撮影した天の川
「あ、、、魚眼レンズ家に置いてきた…」
みさと天文台まで天の川を撮影に来て、レンズの画角が足りないことを経験するものです。 小学校4年生の時に使った星座早見盤には必ず天の川が載っており、それを見れば天の川が空全体にかかるアーチ(角度にして180度もの巨大なもの)であることが明確にわかります。 そして、星座早見盤は、魚眼レンズで空を捉えたものとほとんど同じであることにも気づくかもしれません。
「天の川と建物が入った歪みのない写真がほしい」
報道関係者から頻繁にこのようなリクエストをいただきます。
結論からいいますと、天の川のほぼすべてを入れ、かつ景色を歪み無く撮ることは不可能です。 天の川のごく一部でいいのであれば歪みなく撮れますが(超広角レンズによる試作品)、みさと天文台は敷地が狭いため建物をしっかり入れようとすると、空撮または危険な場所から撮影しなければなりません。 また「天の川のごく一部」の写真では、“川”らしい絵にならず、 天の川のスケールも伝わらず、みさと天文台の視界の広さも伝わりません。
天の川全体を入れると、なぜ写真が歪んでしまうのか? 実際の天の川はいつでもまっすぐに見えます。 地平線もそうですね。 それは、「無限遠の天球」に映し出されている映像と捉えることができます。 ところが、星座早見盤や写真は、2次元の「平面」です。 「無限遠の天球」の広い範囲を、歪みなく「平面」に変換する事は可能でしょうか? これはまさに地理で習った「投影」で、 欠点の無い投影法が無い事を思い出されたのではないでしょうか。 例えば「メルカトル図法」は北極・南極の面積が巨大化してしまう、 すなわち歪みが大きくなってしまうわけですね。 だから、空の広い範囲を平面に投影する星座早見や写真は、必ず歪みを伴います。
天の川全体を撮ることができる魚眼レンズ(円周魚眼・対角魚眼)で、天の川をまっすぐに撮ろうとすると地平線は曲がり、 地平線をまっすぐに撮ろうとすると天の川が曲がります。
もし、お近くにカメラが専門の方がいらっしゃったら、180度ある被写体を周辺まで含めてすべて歪み無く1枚の写真に収められるか 尋ねてみると良いかもしれません。
テレビ放映で、歪みの少ない映像で天の川のスケールを伝えるには?
みさと天文台の天の川の写真は、どこをトリミングしても歪みの少ないSIGMAの円周魚眼レンズを主に使用しています。
ですので、下記の写真素材を利用し、パン、ティルト、回転、拡大、縮小を行えば、ご要望の映像を作ることができます。つまり、
- 水平方向に天の川が写っている場合は、地平線に沿って画像の一部を、回転・拡大・縮小させながらパン。
- 垂直方向に天の川が写っている場合は、写真の左右をカットし、中央部分をティルトアップ。
天の川の一番の見頃は、夏休みの時期ですが、そのときは「南から頭上を通って北へ」天の川のアーチができています。 さて、お手持ちの高感度取材用カメラでどうやって撮影されますか? 当然、業務用カメラに魚眼レンズがついている事はほぼ無いと思われます。 やはり、ティルトアップでそのスケールを伝えるしかありません。
各画像をクリックすると、高解像度の写真をご覧になれます。無償で商用利用可能なCC BY-SA 3.0ライセンスで提供しています。
伝統的七夕の天の川。
撮影日時: 2019/8/7 23:01(地上)、23:02(空)
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 15mm F2.8→4 + ニコンD810Aよる固定撮影。FX・ISO3200・30秒露出・rawデータよりダーク減算・画像処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: 伝統的七夕(旧七夕)の日は、必ず23時頃に月が沈みます。月が西の低空までやってくると天の川が徐々に姿を現し、これは幻想的な光景としかいいようがありません。地上の景色は同じ場所からISO12800で60秒露出で撮影しています。最高の条件で撮影できましたので、画像処理にも時間をかけました。
皆既月食と冬の天の川。
撮影日時: 2018/1/31 21:53、22:08
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 15mm F2.8→4 + ニコンD810Aよるガイド撮影。FX・ISO1600・60秒露出・rawデータよりダーク減算・画像処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: 皆既までなんとか天候が持ち、皆既後に急激に曇ってしまいました。皆既の開始直後の数コマの中から良好な2コマを取り出し、画像処理してみました。
ソフトフィルターはつけていません。明るい星が大きく写っているのは、薄い雲が原因です。
端は収差が厳しいです。オリジナルを50%縮小するとなんとかピクセル等倍でも見ることができるでしょうか。
雲間から望む冬の天の川。
撮影日時: 2017/12/14 2:16
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 15mm F2.8→4 + ニコンD810Aよる固定撮影。FX・ISO1600・60秒露出・rawデータよりダーク減算・ノイズ低減処理・カラーに対するメディアンフィルタ・トーンカーブ処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: 雪が降った直後の晴れ間から、かなり状態の良い星空が見えていました。降雪によって空気中の砂粒が少なくなるためです。ふたご座流星群のピーク前の撮影で、ふたご群に属するとみられる流星が2つほど写っています。
沈む瞬間の月と天の川。
撮影日時: 2017/8/2 0:26
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 15mm F2.8→4 + ニコンD810Aよる固定撮影。FX・ISO1600・60秒露出・sRGB・4000KのJPEGを画像処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: 新しいレンズの試し撮りのつもりが、なかなか良い感じなのでちょっと画像処理してみました。設定忘れによりRAWが撮れなかったので、JPEGからのスタートです。画像処理で軽くソフトフィルターを入れ、柔らかく仕上げてみました。F4では端は厳しいですね。
みさと天文台と夏の天の川全景。
撮影日時: 2017/4/2 3:56
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 8mm F3.5→4 + ニコンD7100によるガイド撮影。ISO1600 90秒露出それぞれをrawデータよりダーク減算、2コマを加算合成(露出時間合計3分)・ノイズ低減処理・カラーに対するメディアンフィルタ・トーンカーブ処理・スカイバックグラウンド調整処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: 少し柔らかめに仕上げてみました。rawデータからの一次処理にdcrawを使い、非常に小さく写っている星まで拾い上げてみました。ただし、これを実行すると緑色の微光星が多くなるので、スカイがグレーになるようにRGBバランスを調整してLRGB分解し、カラーに対して3pixのメディアンフィルタをかけて偽色を消しています。使ったdcrawの機能は、ダーク減算、bayerの変換、色差に対するメディアンフィルタ、ウェーブレットノイズ低減です。
約40年ぶりの大雪と冬の天の川。
撮影日時: 2017/1/25 23:53:36
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 8mm F3.5→4 + ニコンD810Aによる固定撮影。ISO3200 60秒露出をrawデータよりダーク減算、ノイズ低減処理・トーンカーブ処理・スカイバックグラウンド調整処理。中央部をトリミング。
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: テレビ関係者から、何度も「歪みのない天の川+建物の絵がほしい」と言われ、円周魚眼で歪みの少ない絵を撮ってみました。円周魚眼の黒ぶちをカットしてしまうと角度がわかりにくいですが、左右は約180度写っています。
当たり前ですが魚眼で各部の歪みを最小化しようとすると、天の川も建物もすべて歪む結果になります。180度ある天の川全体を入れてすべてを歪み無く撮るなんて不可能なのです。
これも基本的な処理にdcrawを使っています。40年ぶりの大雪!ということなので、景色を優先して固定撮影で狙ってみました。西向きは海南の街あかりがけっこう入ってくるのですが、このおかげで雪景色がバッチリ写っています。もっともっと夜空が暗い場所なら、微妙な月あかりがないとこうはいかないと思います。
冬のダイヤモンドと冬の天の川。
撮影日時: 2016/11/26 00:39:31
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 8mm F3.5→4 + ニコンD7100によるガイド撮影。ISO1600 90秒露出それぞれをrawデータよりダーク減算、2コマを加算合成(露出時間合計3分)・ノイズ低減処理・・カラーに対するメディアンフィルタ・トーンカーブ処理・スカイバックグラウンド調整処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: rawデータからの一次処理にdcrawを使い、非常に小さく写っている星まで拾い上げてみました。ただし、これを実行すると緑色の微光星が多くなるので、スカイがグレーになるようにRGBバランスを調整してLRGB分解し、カラーに対して3pixのメディアンフィルタをかけて偽色を消しています。使ったdcrawの機能は、ダーク減算、bayerの変換、色差に対するメディアンフィルタ、ウェーブレットノイズ低減で、どれも天体写真でしっかり使える印象です。
夏の大三角と秋の天の川。
撮影日時: 2016/8/9 01:33:31
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 8mm F3.5→4 + ニコンD7100によるガイド撮影。ISO1600 90秒露出それぞれをrawデータよりダーク減算、2コマを加算合成(露出時間合計3分)・ノイズ低減処理・トーンカーブ処理・スカイバックグラウンド調整処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: 天文台の西側・北側は街あかりが入ってくるため、撮影は非常に難しいものです。この日は透明度が良く、北側もたくさんの星が見えていました。それでも写真ではかなり空が明るくなりますので、画像処理で調整してあります。アンドロメダ銀河、二重星団、すばるも写っています。
夏はどうしてもノイズが多くなります。空はノイズ低減処理が2段、地上の景色はそれに加え解像度を半分に落としてノイズ低減処理をしてあります。
備考: 2017年9月に再現像。
みさと天文台と夏の天の川。
撮影日時: 2016/4/16 03:23:23
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 8mm F3.5→4 + ニコンD7100によるガイド撮影。ISO1600 1分露出それぞれをrawデータよりダーク減算、3コマを加算合成(露出時間合計3分)・ノイズ低減処理・トーンカーブ処理・スカイバックグラウンド調整処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
コメント: 透明度が悪い条件での撮影で、画像処理でスカイバックグラウンドを調整してあります。へびつかい座にエメラルドグリーンのリニア彗星(252P)が写っています。
備考: 2017年9月に再現像。
夜明け前の夏の天の川。
撮影日時: 2015/4/26 03:53:03
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 8mm F3.5→5 + ニコンD7100によるガイド撮影。ISO6400 30秒露出12コマを合成、トーンカーブ処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
謝辞: レンズは写真家の白樫佑将氏からお借りしました。
コメント: 薄明が始まってからの撮影ですので、東側(左側)が明るくなっています。はやりガイド撮影の方が後々の処理が楽です。
固定撮影による冬の天の川。
撮影日時: 2014/12/14 23:20:03
撮影データ: SIGMA EX DG FISHEYE 8mm F3.5開放 + ニコンD7100による固定撮影。ISO3200 30秒露出をそれぞれ星像補正、5コマを日周運動にあわせて回転して合成、トーンカーブ処理
撮影者: 紀美野町立 みさと天文台
謝辞: レンズは写真家の白樫佑将氏からお借りしました。
コメント: 30秒露出でも星が若干流れてしまうので、北極星を中心として少し回転させたものとオリジナルとの比較暗合成により、星を点像に近くしてあります。
※各写真は公序良俗に反する使い方を除き、「撮影: 紀美野町立 みさと天文台」のクレジットをつければ、非商用・商用を問わず自由に利用できます。厳密なライセンスに従いたい場合は、 Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unportedに従って使用する事ができます。 なお、マスコミ関係の方が写真をご利用になる場合、事前の連絡は不要ですが、使用後にみさと天文台までご連絡ください。